研究テーマ概要


【環境試料、生体試料、高純度材料に含まれる微量元素の分析手法の開発】

本研究室は、以下の4つのグループに分かれて互いに連携を保ちながら研究を進めています。全てのグループに共通する 大きな研究の目標は、『環境試料、生体試料、高純度材料に含まれる微量元素の全濃度を求めると共に、その微量元素がどのような 化学形態で存在するのかを明らかにすること』にあります。

A 環境中の微量元素の動態
微量元素が大気圏、水圏、生物圏、地圏の間をどのように循環しているかを 明らかにしようとしています。この研究グループの対象とする試料は、大気粉塵、焼却飛灰、 自動車排ガス粒子、雨水、河川水、湖水、海水、底質などの環境試料です。

1. 大気粉塵リアルタイムモニタリング
大気粉塵をフィルター上に捕集する方法では、捕集を行っていた間の、微量元素の平均濃度しか分かりません。 そこで、大気粉塵を直接プラズマに導入し一粒子ごとの多元素を測定できるシステムを開発しました。大気粉塵一粒子中の 多元素を同時に定量すると、時々刻々と変化する、大気粉塵の起源を明らかにすることができます。 今後は、このリアルタイムモニタリングの結果を研究室のホームページに公開していく予定です。

長期モニタリングの結果(1995年5月〜2013年12月)

リアルタイムモニタリングの結果(2013年10月14日、2014年10月23日、2015年4月27日、2015年8月3日、2015年11月16日、2016年10月13日、2016年12月6日)

2. 河川水及び水道水中のハロゲン元素の化学形態別分析
神田川の上流から下流にかけてヨウ素の化学形態別分析を行った結果、落合下水処理場を過ぎた後の地点で、 I-, IO3-以外に、X線造影剤として使用されているイオヘキソール及びイオパミドールが検出されました。中央大学後楽園校舎の水道水は、 朝霞浄水場でオゾン処理をして供給されています。オゾン処理することにより生成されるIO3-が多量に検出され、また、ごく僅かですが、 イオヘキソール及びイオパミドールも検出されました。

B 生体中の微量元素の役割
ヒトの酵素全体の30%には金属が含まれており、活性中心として生命活動に重要な役割を果たしています。 この研究グループの目的は、動物と植物において、微量金属元素の役割を明らかにすることにあります。 この研究グループの対象とする試料は、動物の血液、臓器、尿、フンなどと、植物の根、茎、葉などの生体試料です。

1. セレンの代謝機構の解明
順天堂大学医学部との共同研究を行なっており、Se欠乏食で飼育したマウスにセレン安定同位体である 82Seを濃縮した亜セレン酸又はセレノメチオニンを静脈注射した後に、内因性(今まで存在していたSe)及び外因性 (注射したSe)の82Seの体内分布とSeの化学形態を追求しています。その結果、Seは主に肝臓や腎臓に分布しており、 血漿や赤血球にも多く分布していることが分かりました。Se結合タンパク質の同定・定量を行うと共に、体内で生成された Se化学種の時間的変化を追跡することによりSeの代謝メカニズムを解明しようとしています。

2. 植物への金属取り込み機構の解明
植物は土壌から金属を吸収することで生長します。 しかし、過剰な金属や有害金属の吸収は植物の生長を阻害します。 私たちは、分析化学とゲノム科学の二刀流で、植物における金属の 取り込み機構を分子レベルで明らかにし、環境に強い植物を作出することを 目指し研究を行っています。現在、重金属に対して超耐性を示す特殊なアブラナ科植物を材料に 「重金属超耐性遺伝子」の探索を進めており、将来的には劣悪土壌における作物生産や植物を用いた 環境浄化(ファイトレメディエーション)に繋げたいと考えています。他にも、植物の環境適応進化に 関する研究や植物由来の新奇機能性金属タンパク質の同定法の開発なども行っています。

C 高純度材料中の微量元素の定量
半導体材料中の微量汚染元素を測定することは、半導体材料の向上や製品の信頼性確保に欠かせないことです。 この研究グループの対象とする試料は、シリコンフェハー、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などといった高純度材料です。
1. SiC, GaNの微量汚染元素の定量
炭化ケイ素 (SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった高純度セラミックス材料も半導体産業で利用されており、これらの不純物の測定が 要求されています。原子スペクトル分析法により固体試料の微量元素分析を行う為には、固体試料を酸分解して一旦溶液試料にするのが普通です。 しかし、SiC, GaNなどは非常に溶解しにくく、溶液化することが困難です。そこで、SiC, GaNを酸分解せずに分析できる手法を開発しています。

D 新しい分析手法の開発
上記に述べたA, B, Cの研究グループは応用研究です。その応用研究を達成させるために新しい分析手法を開発しています。

1. 化学形態別分析
金属結合タンパク質を同定・定量する手法の開発を行っています。金属結合タンパク質の同定はトリプシン分解 したペプチドをエレクトロスプレー質量分析法(ESI-MS)で同定を行っています。しかしながら、ESI-MSでは精確な定量が困難で あるため、定量性に優れる誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて、ペプチド中の硫黄をキャピラリーHPLC-ICPMSで定量しています。 最終的にはトリプシン分解の収率・カラムへの吸着率を考慮し、金属結合タンパク質の定量を目指しています。

2. レーザーアブレーション-ICP-MS法
生化学の分野では、タンパク質の分離法であるポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により 金属/非金属結合タンパク質の分離がよく用いられています。レーザーアブレーションICP-MS法を用い、目的とする金属が どのバンドに含まれているかを網羅的に検索します。一方、レーザーアブレーションICP-MS法を用いて半導体産業で使われている 高純度材料中の超微量元素を直接定量する手法を開発しています。

3. オンラインマイクロカラム法
河川水及び海水中の希土類元素はpptレベルであり、高感度なICP-MSを用いても直接分析するのは困難なので、 濃縮が必要になります。本研究室では、キレート樹脂により濃縮すると共に、不要な共存元素を除去できるオンラインカラムICP-MS法を独自に確立しました。 この方法を用いて、神田川の上流から下流にかけて河川水及び海水中の希土類元素濃度を測定した結果、落合下水処理場を過ぎた後の地点でGdの正の 異常が観測されました。このGdの正の異常は、医療機関で使われている磁気共鳴イメージング(MRI)の造影剤が原因であることを追求しました。

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